■続いて人体防御 最大の役割「腸管免疫」について
人体免疫細胞の約60%~70%が集中していると言われる「腸」!
口から肛門までホースの様に繋がっている消化器官は、絶えず病原菌やウィルスが入り込みます。これら病原体から身体を守る重要な役割を「腸」が担っています。
小腸で栄養素やミネラルを吸収する器官を「絨毛(じゅうもう)」と言います。絨毛は小腸壁にヒダ状に突起しています。
図「NHK 人体 第4週 腸」より
① 免疫のかなめ「パイエル版」
その絨毛の間に誰もが持っているパイエル版という器官(リンパ組織)が、いたる所に点在しています。このパイエル版が私たちの免疫に欠かせない役割を担っています。
■役割その一〈免疫細胞のトレーニング場〉としての役割
パイエル板の内部(腸上皮質の内側)には人体免疫細胞の約60~70%が集中していて、免疫機関としての特別な役割があります。ここでは腸内細菌やウィルスなどを取り込んで人体に「有用な菌(味方)」と「害を与える菌(敵)」の判別情報を免疫細胞に教えています。
下図内
パイエル版表面にあるM細胞が内部の樹状細胞に菌を渡します。
樹状細胞は「敵」と「味方」を判別しT細胞などのリンパ球に情報を伝えます。人体に有用な「味方の菌」は攻撃させないようにトレーニングします。
■役割その二〈病原体やウィルスへの攻撃と抗体生産〉
上図内1→2→3→4→5:
樹状細胞(1)が「敵」と判断した病原菌やウイルスの情報(抗原情報)は免疫の“司令官”であるT細胞(2)に伝えられます。T細胞は、抗原情報を記憶した“殺し屋”のキラーT細胞(3)を大量に分化させウイルスに感染した細胞(ガン細胞含む)や菌そのものを探して破壊するように命令します。
次に、T細胞(2)は、B細胞(4)に抗原情報を基に抗体を作るように指令を出します。 指令を受けたB細胞は、そのウイルスに対抗する大量の抗体(5)を作り出します。この抗体が全身の免疫シルテムに加わり、ウイルスに感染した細胞や菌を破壊します。
この様にパイエル版では免疫システムが今この瞬間も休みなく稼働し、また同じようにリンパ節など全身に配備さえた、あらゆる免疫機能が複雑に繋がって私たちの身体を守ってくれています。
腸内が健康に保たれていれば、免疫システムの機能も最大限活性化されています。
ストレスや睡眠不足、食事の偏りなどで腸はダメージを負うことも良く知られていますが、
腸を健康に保つには「腸内細菌叢」との共存が重要なカギとなります。
次の項目では「腸の恒常性維持と腸内細菌」免疫との関係 についてお話します。